コミュ障が社会人イベントの自己紹介で苦悶する話 [日記]

たまに人と喋らないと、左脳の言語を作る部分が衰える気がする。
ということで、今回は社会人向けの読書会イベントに参加した。

 

なぜ読書会なのかというと、単純に僕が毎日、本を読むからというのが一点。

もう一点は、僕のような変人の同族が来ると予見したからだ。
YouTubeTwitter、ゲーム、ネットフリックスなどなど....
現代には数々の魅力的なデジタルコンテンツがある。

そんな中、わざわざ本を選んで、好んで時間を使うような人間とはさぞ気が合うことだろう。

 

とはいえ、僕は重度のコミュ障だ。
初対面の人と話す場合のストレスは計り知れない。
なので、今回みたいな場合は、己を炎へなげうつ覚悟が必要である。

当日

てなわけで当日になった。
場所は普通のカフェ。
僕は大物感を出すため(道に迷って)現地に遅れて着いたためすでに僕以外の参加者は揃っていた。
人数は僕を入れて4人。僕の他に主催者が1人と、参加者の方が2人。
年齢層はみなさん僕より一回りくらい年上みたいだ。
まあこちらは19の小僧で、ここは社会人向けのイベントなので当然かもしない

そそくさと買ったコーヒーをもって席に座り、参加者さんと軽く会釈。
早速読書会が始まった

主催者の方が言う


「それじゃあ、まず、順番に自己紹介をお願いします」

 

その瞬間、僕の体に激震が走る。
心臓がフルスロットで動き出し、思考は一瞬で凍りつき重く鈍くなる。
体は硬直し、骨や内臓にバイブレーション機能があるかの如く、全身がガタガタと震えだす。

ごく一般的な緊張反応....

だが、それにしては僕のものはやはり少し過剰だ。

 

思い返せばいつだってそうだった
学校であれ、仕事であれ、すべてはこの一言から始まる。
だからその一言を聞くと、無意識レベルで地獄を連想し、背中に戦慄が走るのだ。

 

自己紹介なんてした記憶は遠い過去。
そして当然、今日のために考えておいた、なんて戦略的な動きも取っていない。

だが、不幸中の幸いか。前には2人いて、僕の順番は3番手。これなら少しは時間がある。
その時間で話せるように思考をまとめておく。なおかつ、ある程度の平静を取り戻しておきたいところだ。
一番手の人が話し出す。一人目は25歳くらいの女性だ。
...........
見事なトーク力だ....
長く、内容が濃い。だがそれでいて簡潔で洗礼されている。
淀みが無く、流れるような発言だ。
このレベルの自己紹介ができるのは少数派だろう。
だが、そんなハイレベルな言葉たちは今の僕に対しては冷たいものだ。まるで脳を凍りつかせる液体窒素に思える。
のしかかってくるプレッシャーが破格なのだ。

その後にある自分の番からさらに目を背けたくなる。
簡単には手の届かない、圧倒的なもの見せつけられた。

 

その後は不甲斐ないことに、しばらく何も考えることができなかった。立石に水な彼女を前にただ硬直していただけとなってしまっていた。
そして一番手の自己紹介が終わってしまう。

 

次に二番手の人が話し出す。こちらは男性。やはり25歳くらい。
トーク力のレベルは、先ほどの自信のある表情から察していたが、一番手の彼女と同じような感じで話に慣れてらっしゃる。
自信をもって、ある程度長々と自分のことについて語っている
そして2人とも、IT企業でどうたらとか、SEだとか、横文字職業のエリートらしい。
読書会という意識の高いイベントなので予想はしていたが、ちょっと面子が強すぎる。
僕は若輩ニート重篤コミュ障のため、その力の差に畏怖と畏敬の念を抱いた。

 

さて、困ったな。
頭の回転と反比例して上がっていく心臓の動悸。

それをなんとか鎮めようと呼吸法、瞑想、自己暗示を試みる。
だが、そんなものでどうにかなればコミュ障なんて言葉は存在しない。
当然、体の緊張反応から解放されるはずはなかった。

多少適当でもいいから何か言葉をひねり出さねば。


(そういえば2人とも、自分の仕事を話して、その後趣味を話すというようなスタイルをとっていた
.....その流れに乗らせていただこうか)

と、考えて腕を組み始めた後にはもう2番手の人の自己紹介も終わっていた


次は僕の番だ
「それじゃあ、次お願いします」
そう言って主催者がこちらに手をかざすと、全員の目がこちらに集まる。
その複数の視線に射抜かれて3、4秒。体感にして10秒程硬直してしまった。
体を解凍するように、一度呼吸をし、体内に空気を回す。
脳にも酸素を送り稼働を促す。
(皆さんのスタイルに乗ずるなら、まずは職業からだ)
そう思い、ゆっくりと口を開いた
「(電脳ぷりん)です。仕事は....していません」
.....
あーあ、とまってしまった。まあ案の定といえば、悲しいがそうだろう。
全体の雰囲気を確認すると着地点を見失ったが故の動揺、今までの流れがせき止められたが故の揺らぎ、みたいなものが空気中に充満していた。
つまり、微妙な空気だ。
うーん、でもこれ以上喋ることはない。
というか、頭は現状ほぼ真っ白。この重要な局面で脳は仕事を放棄してしてしまったようだ。
しかもなんだかフワフワして気持ちがいい....
限界まで走った後に何も考えず地面に転がり込む時のような....そんな感覚に近い
呆れたことにまだ走り出してすらいないというのに。スタートラインにたっただけだというのに。

........もうどうしようもないからそれをそのまま伝えようかな。
頭が動かないから仕方ない....それしかできそうにない....
「すみません...あんまり話せるようなことなくて....」

はぁ....僕はなんでいつもこうなんだろう....
いつも初対面というだけで、動けなくなり黙る。
口が動いたかと思えば、出てくるのは小学生程度の発言ばかり。


けど、まあ考え方を変えればよくも悪くもいつもこうなんだよな。
だから、ポジティブに捉えれば今回が特別悪かったわけじゃない。
今回もいつも通りをやっただけ。
むしろ喋れただけ良かった?
そうだよ喋れただけでよかったんだ!?
と、緊張の受け入れキャパを越えて、バカになっていると、見かねた主催者の方が
「えーっと、ここに参加してくれたきっかけとかありますか?」
と助け船を出してくださった。

僕はそれに飛び乗る。
「最近家族以外と話さないので、人と話すことのリハビリができたらと思いまして....よろしくお願いします!」

「はい、じゃあ今日は沢山話してくださーい」

.....締まった!
なんとかなった、のか?
僕が喋った後は参加者の方々も「よろしくー」と反応して下さった。
おかげで動悸も体の震えも2割引きくらいになってくれた。
皆さんのフォローにより大変救われる結果となった。

 

その後も動悸と震えは続き、床に倒れこみたくなる時もあり。
次の日は過度な疲労で体が鉛のようになり布団から動けなくなった。
しかし、それでもなんとか皆さんの温かな対応により楽しいイベントになった。
僕ももしコミュ障がなおったら、コミュ障を救える人間になりたいと思った。

めでたしめでたし